最近、賃貸住宅の家賃が上がっているというニュースをよく目にするようになりました。
特に東京都心では賃料の上昇が続いていて、「まだまだ家賃は上がる」という見方もあります。
そんな中、三菱地所リアルエステートサービスが発表した「賃貸マンション市場の現状と今後の展望」というレポートが、なかなか興味深い内容でした。
現在の賃貸市場は、都心部を中心に依然として「貸手優位」。
出社回帰によって職場に近い場所に住みたいという需要が戻り、建築費や人件費、物価も上昇しています。
当然、新築マンションの供給コストも上がる。
その結果、新規募集だけでなく、既存の入居者に対しても更新時に賃料を引き上げようという動きが出てきています。
ここまでは、最近よく聞く話です。
ただ、今回のレポートで私が気になったのは、その先でした。
「家賃を上げれば通る」時代は続くのか

事業者へのアンケートでは、現在の市場を「拡大期~ピーク」と見る回答が過半数を占める一方、「減退局面」と見る回答も増え始めているそうです。
理由の一つが、借りる側の「支払い能力」。
家賃だけが上がっているわけではありません。
食料品も、光熱費も、ガソリンも、さまざまなものが値上がりしています。
実質賃金が伸び悩む中で、
「家賃が上がっているから、さらに家賃を上げよう」
が、いつまでも通用するとは限りません。
借主にも当然、「ここまでなら払える」というラインがあります。
私はここが、これからの賃貸市場を考える上でかなり重要だと思っています。
二宮では、もっとシビアに考えた方がいい

今回のレポートは主に都市部の賃貸マンション市場についての話ですが、二宮のような郊外では、私はもっとシビアに考えた方がいいと思っています。
東京都心のように、圧倒的に住宅が足りない市場ではありません。
だから、
「世の中の家賃が上がっているから、この部屋も3,000円上げよう」
という単純な話にはなりません。
駅から近い。
築浅である。
きれいにリノベーションされている。
駐車場がある。
ペットと暮らせる。
インターネットが無料。
広い庭がある。
眺望がいい。
戸建てである。
こうした「その家賃を払ってでも住みたい理由」がある物件は、これからも強いでしょう。
逆に、築年数が経っていて、設備も昔のまま。
特にこれといった特徴もない。
それでも「周りが上がっているから」という理由だけで賃料を上げれば、当然、借主は他の物件と比較します。
これからは同じ地域、同じ築年数でも、
「家賃を上げられる物件」と「上げにくい物件」
が、はっきり分かれてくるのではないでしょうか。
月3,000円の値上げは、本当に得なのか

最近、オーナー様から、
「更新のタイミングで家賃を上げられませんか?」
という相談を受けることがあります。
もちろん、現在の家賃が相場より明らかに安ければ、適正な水準に見直すことは必要です。
ただ、私は必ずしも「上げられるなら上げましょう」とは考えていません。
例えば、月3,000円家賃を上げたとします。
年間では3万6,000円の増収です。
ところが、その値上げをきっかけに長く住んでくれていた入居者が退去してしまったらどうでしょう。
次の入居者が決まるまで1か月空室になっただけでも、家賃によっては数年分の値上げ効果が飛んでしまいます。
さらに退去すれば、原状回復や募集のための費用も発生します。
そう考えると、
「いくら上げられるか」より、「上げることが本当にオーナーにとって得なのか」
まで考える必要があります。
これは管理会社の大事な仕事だと思っています。
これからは「値上げ」より「価値を上げる」

今回のレポートでは、今後の賃貸経営ではハード・ソフト両面で明確な付加価値を提供することが重要になると分析しています。
これは私もその通りだと思います。
古くなった設備を交換する。
インターネットを無料にする。
宅配ボックスを設置する。
壁紙や床を少し工夫する。
ペット可にする。
間取りや使い方そのものを見直す。
大掛かりなリノベーションをしなくても、物件によってできることはいろいろあります。
家賃を3,000円上げることを考える前に、
「3,000円高くても、この部屋を選びたいと思ってもらうには何が必要だろう」
と考える。
これからの賃貸経営では、こちらの発想の方が大切になってくる気がします。
賃貸市場も「選別」の時代へ

ここ数年の不動産市場は、売買も賃貸も全体的に価格が上昇してきました。
市場全体が上がっている時は、ある意味分かりやすい。
でも、その流れが少し落ち着いてくると、今度は物件そのものの力が問われます。
立地。
建物。
設備。
管理状態。
そして、その物件ならではの魅力。
二宮のような郊外の賃貸市場では、特にその傾向が強くなると思います。
家賃が上がるか、下がるか。
もちろんそれも大切ですが、これからもっと重要になるのは、
「その家賃で選ばれる理由があるか」
ではないでしょうか。
不動産の現場にいると、最近そんなことを感じます。

