「地方移住」という言葉を、この10年くらいでずいぶん聞くようになりました。
二宮町でも、特にコロナ禍以降、東京や横浜方面から移住を検討される方が増えました。
ただ最近、もうひとつ面白い暮らし方が注目されています。
それが「二地域居住(デュアルライフ)」です。
簡単に言えば、一つの場所に完全に移住するのではなく、二つの地域に生活の拠点を持つ暮らし方です。
例えば、
「平日は東京で仕事をして、週末は二宮で過ごす」
「仕事のある日は横浜、テレワークの日は二宮」
そんな暮らし方です。
そして私は、二宮町はこの二地域居住と、とても相性のいい町なのではないかと思っています。
国も「二地域居住」を後押しし始めている

国土交通省が発表した令和9年度予算概算要求では、「国民の安全・安心の確保」「持続的な経済成長の実現」と並んで、「個性をいかした地域づくりと持続可能で活力ある国づくり」が重点項目の一つに位置付けられています。
その流れの中で進められている政策の一つが、二地域居住です。
国は2024年に関連法を改正し、二地域居住をする人と地域をつなぐ仕組みづくりや、「住まい」「なりわい」「コミュニティ」といった課題を解決する取り組みを進めています。
つまり二地域居住は、単なる「別荘暮らし」の話ではありません。
地方への新しい人の流れをつくり、空き家を活用し、地域に関わる人を増やしていく。
そんな地方政策の一つとして、本格的に動き始めています。
では、なぜ二宮なのか

二地域居住を考えるとき、二宮には絶妙なポジションがあります。
東京からものすごく近いわけではありません。
でも、遠すぎもしない。
東海道線に乗れば東京・横浜方面へ一本で行けます。一方で、二宮駅を降りれば吾妻山があり、少し歩けば海があり、町の中には畑や里山の風景も残っています。
車なら小田原や箱根方面にも気軽に出掛けられます。
都会とのつながりを残したまま、暮らしの環境を大きく変えられる。
これは二地域居住では、かなり重要な条件だと思います。
二宮の「何もなさ」が、むしろ魅力になる

二宮町について、私はこれまで何度も書いてきましたが、この町には大きな観光地がありません。
駅前に大型商業施設があるわけでもありません。
夜になれば静かです。
完全移住を考えている方からすると、
「ちょっと不便かな」
「もう少しお店があった方がいいな」
と思われることもあります。
でも、二地域居住という視点から見ると、この評価が少し変わってきます。
平日は都会で仕事をして、人混みの中を移動して、便利な生活をする。
そして週末になったら二宮へ来る。
朝、吾妻山を歩く。
海沿いを散歩する。
庭の手入れをする。
地元のお店でご飯を食べる。
何をするでもなく家で過ごす。
そんな時間を求めるのであれば、二宮は観光地でないからこそいい。
私はそう思います。
「遊びに行く場所」ではなく、もう一つの暮らす場所として考えたとき、二宮の静けさは大きな魅力になります。
不動産の価値も変わるかもしれない

そして、不動産屋として私が興味を持っているのがここです。
二地域居住が広がれば、これまでとは違った基準で不動産が選ばれるようになる可能性があります。
例えば、駅から少し離れた築年数の古い戸建。
通常の住宅探しでは、
「駅から遠い」
「建物が古い」
「リフォーム費用がかかる」
という理由で、なかなか買い手が決まらないことがあります。
でも、
「毎日通勤する家ではない」
と考えたらどうでしょう。
駅徒歩25分でもいい。
多少古くても、自分で少しずつ直していけばいい。
庭があって、静かで、休日をゆっくり過ごせる方が大切。
そんな価値観なら、今まで市場で評価されにくかった住宅が、魅力的な物件に変わる可能性があります。
二宮には、そんな家が結構ある

実際、二宮には築年数の経った戸建住宅がかなりあります。
山西なら、海と吾妻山の間で暮らすような環境があります。
富士見が丘なら、坂はありますが、その分、場所によっては眺望や静かな住環境があります。
川匂方面なら、駅からの距離と引き換えに、よりのどかな環境が手に入ります。
一般的な不動産市場では「駅徒歩○分」「築○年」といった数字が評価の中心になります。
でもセカンドハウスなら、
「ここに来たとき、どんな時間を過ごせるか」
の方が重要になるかもしれません。
これは、二宮町の空き家問題を考えるうえでも面白い視点です。
「移住するか、しないか」の二択ではなくなる

これまで二宮町への移住相談を受けていると、
「仕事は東京だけど、本当に二宮へ引っ越して大丈夫でしょうか」
という話になることがあります。
当然だと思います。
生活の拠点を完全に移すというのは、大きな決断です。
仕事、学校、友人関係、病院、買い物。
生活にはいろいろなものが結びついています。
だから私は、これからは必ずしも、
「東京を離れて二宮へ移住する」
だけでなくてもいいと思っています。
まずは週末だけ二宮で暮らしてみる。
月の3分の1をこちらで過ごしてみる。
テレワークの日だけ二宮に来る。
そうやって地域との関係が深くなり、結果的に移住する人もいるでしょう。
逆に、ずっと二地域居住を続ける人がいてもいい。
人と地域との関わり方は、もっと自由でいいと思います。
二宮にとってもメリットがある

これは住む人だけの話ではありません。
週末だけでも二宮で生活する人が増えれば、町のお店を利用します。
スーパーで買い物をします。
飲食店へ行きます。
地域のイベントに参加するかもしれません。
そのうち知り合いができて、地域活動に関わる人も出てくるでしょう。
観光客とは少し違う。
住民とも少し違う。
でも、二宮という町に継続的に関わってくれる人です。
人口減少時代の地域を考えるとき、私は「住民を何人増やすか」だけではなく、「二宮に関わる人をどれだけ増やせるか」という視点も大切になってくると思っています。
二宮は「完全移住」だけを目指さなくてもいい

二宮町は、大きな観光地ではありません。
リゾート地でもありません。
だからこそ私は、この町は二地域居住に向いていると思っています。
東京から近すぎず、遠すぎない。
自然は身近だけれど、田舎すぎない。
都会と完全に縁を切らなくても、暮らしの質を大きく変えることができる。
東京に住むか、二宮に住むか。
これまでは、どちらかを選ぶのが普通でした。
でもこれからは、
「東京にも暮らす。二宮にも暮らす。」
そんな選択肢が、もっと普通になっていくのかもしれません。
そして二地域居住という新しい暮らし方が広がっていけば、今は空き家になっている古い家や、駅から少し離れているため評価されにくかった住宅にも、新しい役割が生まれる可能性があります。
不動産屋としても、これはとても興味深い変化です。
「この家はいくらで売れるか」だけではなく、
「この家なら、どんな二宮暮らしができるだろう。」
そんな視点で物件を見る時代が来るのかもしれません。
二宮町には、まだ使われていない「暮らしの資源」がたくさんあります。
二地域居住は、それをもう一度活かすきっかけになるのではないでしょうか。
